
こんにちは、コンバージングテクノロジー研究所の山本です。
ANA X様、東芝データ様、川崎市様と共に、脱炭素社会の実現に向けて、各社のスマホアプリを通して行った市民の環境行動によるCO2削減量を、環境省のデータベースを用いて分析・可視化する国内初(※1)の実証実験を行いましたので、その内容についてご紹介します。
はじめに
富士通と各社は、環境省が推進する「脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動(デコ活)(※2) のプロジェクトであるThe POSITIVE ACTION Initiative(以下、PAI)において、個人の環境行動が可視化され、評価される世界の実現に向けて様々な議論を重ねてきました。
PAIが目指す世界の詳細については、こちらの動画をぜひご覧ください。
今回の実証では、環境行動を集約しCO2削減量を算出するプラットフォーム実装による技術検証と、CO2削減量の価値化にむけた価値検証を行いました(実証期間:2025年2月27日~2025年3月28日)。
この記事は技術検証にフォーカスし、下の図に示すように環境行動データを取得・分析してCO2削減量を算出する「環境価値化プラットフォーム」及び、算出結果を可視化しユーザへフィードバックするWebアプリケーション「Eco Potentialサービス」について具体的に説明します。

環境価値化プラットフォームとは
環境価値化プラットフォームは、各アプリから取得した環境行動データを分析して、CO2削減量を算出します。
CO2削減量の算出には、環境省が整備した「デコ活データベース」(※3) を活用しています。このデータベースには人々が行う環境行動のCO2削減量算定方法が登録されており、富士通からも6つの行動を提案しています。
実証実験では、ユーザが行った環境行動は、各社が提供するアプリ(ANA X様:「ANA Pocket」、東芝グループ様:「スマートレシート®」、富士通:「Green Carb0n Club」)に記録されるため、そのデータを取得しデータ分析を行いました。今回の実証実験で対象とした環境行動と取得方法は以下のとおりです。

Webアプリケーション「Eco Potentialサービス」とは
EcoPotentialサービスは環境価値化プラットフォームで算出したCO2削減量をユーザに見せることを目的として開発しました。
CO2削減量などを数値として見せるだけでは楽しさが得られず、サービスを使う動機にもつながりにくいと考え、「キャラクター生成」と「フィードバックでコメント・レコメンドコメント表示」という2つの機能を提供しています。

1.キャラクター生成
ユーザが行った環境行動のカテゴリと環境行動を実施し始めてからの経過日数に応じてキャラクターを生成します。例えば、最初は「移動」カテゴリの環境行動を実施することでキャラクターが「馬」であったとしても、途中で「買い物」カテゴリの実施回数が多くなればキャラクターが「リス」に変わります。日々変化していく様子を見る楽しさがサービス利用の動機になると考えました。
2.フィードバックコメント・レコメンドコメント表示
日々のCO2削減量を振り返ってもらうためのグラフ表示による可視化に加え、環境行動に対する評価や改善点の提案を行います。ユーザが実施した環境行動の傾向を踏まえ、実施回数が多い環境行動を評価するフィードバック(徒歩・自転車を頑張っているなど)や、異なるカテゴリの環境行動を促すレコメンド(PETボトル回収スポット探索がおすすめなど)を表示します。この機能によって、ユーザの行動変容の促進を図ります。
実証実験に参加し、このアプリを使用した人の体験談が富士通noteに掲載されています!こちらもぜひご一読ください。
note.com
実証結果と見えた課題
環境価値化プラットフォーム
本実証では、富士通としてはアプリで取得したデータを提供するデータプロバイダーとしての立場と、データプラットフォームの実装を行うプラットフォーマーとしての立場で、ユーザの環境行動データの取得や分析、可視化に関する技術検証を行いました。
データプロバイダーとしては、実運用に向けた環境価値化プラットフォームにデータを提供するにあたって必要となる、アプリ側の改修内容及びかかった改修コストを確認できました。一方、本実証において、富士通が提供する環境行動の活動量が他社サービスが提供するものに比べて少ないという結果となりました(下表参照)。最も活動量が多かった環境行動の取得方法が自動かつ、位置情報をONにするだけ、という簡単な取得方法だったことと比較すると、「QRコードを読み取る」という、取得方法が煩雑で行動実施と記録のハードルが高かったことが原因だと考えています。活動量を増やすための取得方法の変更等、改善していく必要があります。
プラットフォームの実装においては、環境行動データ取得のためのID連携やAPI実装等バックエンド機能の実装という点において、実証期間を通してサービス利用が不可となるシステムのバグやオーバーフロー等も発生しなかったことから、機能・非機能両面での技術検証ができました。しかし各社アプリの改修コスト低減を優先したため、アプリごとのカスタマイズ対応が必要となり、非常に大きな工数を要しました。今後、本格的にデータプラットフォームを提供するには、統一化された方式で連携できる仕組みであることが望ましく、既存アプリへの改修可否・規模や責任分界点の調整・整理が重要であると考えています。
Eco Potentialサービス
Eco Potentialサービスへの総登録者数は173人、うち1回以上の環境行動を実施した人は109人という結果でした。この109人が行った環境行動の結果、CO2削減量は合計約4,946.3kgでした。社内掲示板やコミュニティサイトでのユーザへの積極的な働きかけの効果によって行動が増え、設定したKPI(ユーザ数:100人、CO2削減量:4.2t)を上回る数値となり、評価できる結果を得られました。一方、サービス利用者へのアンケート調査の結果、CO2削減量の可視化やキャラクター生成に対して好意的な意見がありましたが、使用頻度が数日に1度であったことや、徐々に離脱してしまったユーザが6割以上を占める結果となり、日常利用に結びつく習慣化の仕組みが課題と分かりました。
今後の展開
本実証では、技術・価値検証を実施しました。今後は、環境価値化プラットフォームの実装に関する課題解決の検討を進めつつ、我々が目指す世界の実現に向けた取り組みを加速させていきます。個人の環境行動促進のためには、行動選択の機会を増やすことが重要となります。私たちは個人の行動を提供する側(サプライサイド、製造・物流・小売業界等)に注目し、企業が行っている環境配慮施策(例:サプライチェーン全体での環境配慮)と、消費者の購入機会・認知度の向上をつなぐ技術開発に取り組んでいきます。
脚注・関連情報・商標について
脚注
※1:環境省が整備したデコ活データベースを活用した実証実験が国内初
※2:脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動(デコ活)
脱炭素につながる新しい豊かな暮らしの実現に向けた国民の行動変容、ライフスタイル転換のうねり・ムーブメントを起こすための環境省が推進する国民運動
※3:市民の行動変容によるCO2削減量のデータベース
「デコ活」の下のプロジェクトである「The POSITIVE ACTION Initiative」において、生活者の様々な脱炭素に資する行動のCO₂ 排出削減効果のデータベースを作成しました!(2025年2月25日環境省報道発表)
関連情報
・富士通、ANA X、東芝データ、川崎市、市民の環境行動によるCO2削減量を環境省のデータベースを用いて可視化する国内初の実証実験を開始(2025年2月25日富士通プレスリリース)
商標について
・「スマートレシート®」は東芝テック株式会社の登録商標です。
・その他、記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。