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特集:富士通発!行動変容支援プラットフォームとは? 第1回「DXの次はBX? 行動科学を誰でも使える時代へ」

コンバージングテクノロジー研究所の石原、山口、松木、片桐です。 私達の研究グループでは、行動変容支援プラットフォーム Behavior Transfomation Platform(通称 BXPF) の研究開発を進めています。

このBXPFの成果の一部である 「行動変容プランニング」 の公開に合わせて、TechBlogにて全4回に分けて特集記事を組みました。

第1回 DXの次はBX? 行動科学を誰でも使える時代へ  ★今回★
第2回 人が動く施策を、エビデンスで設計する
第3回 用途や個人に合わせて進化するアプリ
第4回 BXでイベントプロモーションはどう変わる?

どうぞ最後までご覧頂けると幸いです。

行動変容支援プラットフォームの研究開発チーム
(左上:石原シニアリサーチマネージャ、右上:山口プリンシパルリサーチャー、左下:片桐研究員、右下:松木研究員)

BXってなに?

DX(Digital Transformation)によって、業務プロセスそのものをデジタルで変える取り組みは大きく進みました。 しかし、その変革を本当に成果につなげるには、現場の一人ひとりが実行するか、続けられるか まで設計する必要があります。

たとえば、社内ルールやコンプライアンスを無理なく守ってもらうこと。あるいは、新しい業務に対応するためにリスキリングを行ってもらうこと。 こうした場面では、「正しい施策がある」だけでは足りず、人の心理や行動に合わせた働きかけ が重要になります。

そこで、私達は「人の行動変容を通じて価値を生み出すこと」を BX(Behavior Transformation) と呼び、 心理学や行動科学などの知見をデジタル技術と融合することでBXを支援する技術開発をしています。

行動変容は、ビジネスの新しい打ち手になる

行動変容というと、医療や教育の話に見えるかもしれません。 しかし、実際には下表に示したように、営業、接客、自治体、地域振興、イベント集客など・・・人が動くかどうかが成果に直結する場面は数多くあります。

業界 行動変容に絡んだ課題の例
広告・プロモーション 無関心層に興味をもらいたい
アプリを入れても途中で辞めてしまう
観光・交通 インバウンド客へ文化・マナーを理解してもらう
交通機関の混雑分散をしたい
ヘルスケア 従業員のメンタルケアが難しい
生活習慣改善(禁煙、運動継続、意識改革など)
営業・接客 リスキリングや顧客視点のマインド形成
ハラスメント対応が難しい
経営・人材育成 セキュリティ対策の定着化
コンプライアンス意識の醸成
行政・公共サービス 住民の防犯・防災意識の向上させたい
予防接種・がん検診への参加が頭打ち
金融 貯蓄から投資への意識変革方法がわからない
浪費・多重債務をやめさせたい
環境 過剰消費(買いだめ)をさせないためには
環境意識(エシカル消費、リサイクルなど)の醸成
教育・学習 勉強習慣の身につけるのが難しい
学習意欲の形成

例えば、Uber Technologies, Inc. は配車待ち中の不安や退屈といった顧客の行動や心理に着目し、マップ上に配車中の車の位置を表示するという画面設計にすることでキャンセル率を11%削減した事例があります。 このマップ表示機能は、既に配車アプリのデファクトスタンダードとも呼べる画面設計ですが、顧客の待てなかった行動を、待てるように行動変容した施策として有名です[1]。

つまりBXは、一部の業界だけの話ではなく、多くの事業企画や顧客提案に応用できる考え方です。

配車アプリのマップ表示機能(イメージ)

専門知識と設計コストの壁

一方で、行動変容の施策づくりや実装は、これまで誰もが簡単に扱えるものではありませんでした。
なぜなら、心理学や行動科学の専門知識に加えて、適用先の業務知識や、施策をアプリやサービスとして実装するための設計・開発力まで求められているからです。
ある研究によれば、行動変容アプリの開発には約18ヶ月もの期間が必要になると報告されています[2]。 つまり、効果的な施策を作れる可能性はあっても、それを実際に形にするには高い専門性と大きな開発コストが必要だったのです。

目指したのは、行動科学の“民主化”

行動変容アプリの開発スタイル

そこで私たちの研究グループは、心理や行動に関する理論や研究成果を、再利用しやすい形で整理してきました。
BXPFでは、行動の背景にある 行動原理(Mechanism of Action: MoA) と、働きかけの方法である 行動変容技法(Behavior Change Technique :BCT) の関係性[3]を用いて、 科学的根拠に基づいた施策提案(エビデンスベース・プランニング) ができるように設計されています。

これまで、経験や発想に頼っていたアイデア創出から、近年はLLMを活用してAIブレインストーミング等のシステマティックな方法論も登場してきています。 しかし、そこで出てきた行動変容の施策は、本当にベストなアイデアであると自信を持って上司に説明できるでしょうか? BXPFで提案される施策は、多くの心理学者や行動科学者によって有効性が証明され、国際的にも標準化されている理論体系に理屈付けされた施策です。 言わば、専門家のお墨付きがある施策になるため、誰もが納得しやすく、関係者間で合意形成がしやすい点が最大の特長となります。

BXPFは「プランニング」と「カスタマイズ」の2段構え

BXPFの全体アーキテクチャ

BXPFは、大きく2つのパートからできています。
前半は、課題に対してどんな施策が有効かを考える プランニング
後半は、その施策を実現するPoCアプリやサービスの形に落とし込む カスタマイズ です。

第2回では、このプランニングの中身――なぜその施策を提案できるのか、どんな根拠に基づいているのか――を紹介します。今回は詳細に解説できなかった行動原理MoAや介入技法BCTについても詳しく説明しています。【記事】

第3回では、用途や個人特性に応じて、アプリやサービスをどう変えられるのかを紹介します。ユースケースの類型(後述)ごとに、必要となる要素技術を取捨選択しながら、具体的なアプリやサービスの設計をカスタマイズしていく仕組みとなっています。【記事】

ここではまず、BXPFが 「考える」と「作る」をつなぐ基盤 だと押さえていただければ十分です。

BXPFの最終的な先には、生活者や現場のユーザーがいます。
ただ、プラットフォームの直接のターゲットユーザは、まず 企業や自治体で企画を担う人、そしてその課題解決を支援する コンサル、営業、SE といった職種の方を想定して準備されています。

BXPFでできること

BXPFでは現在、大きく3つの類型でモデルユースケースを整理しています。
一つ目は、接客や患者説明などのスキル向上を支援する 訓練系
二つ目は、服薬や学習など、継続が難しい行動を支援する 習慣系
三つ目は、イベント参加や検診受診など、行動のきっかけをつくる プロモーション系 です。

たとえば、以下のようなユースケースが想定されています。

  • 営業・CS向けの応対品質向上
  • 医療現場での患者説明トレーニング
  • 服薬やセルフケアの継続支援
  • 学習・登校習慣の定着支援
  • 地域振興やイベント参加促進
  • 検診受診のアクション促進

一見ばらばらに見えるテーマでも、BXPFでは「人がなぜ動くのか」という共通の観点から扱えるようにしています。 Fujitsu Research Portal の技術紹介ページにモデルユースケースを公開中ですので、ぜひご参考になれば幸いです。

モデルユースケース

次回以降の見どころ

第2回では、BXPF前半の プランニング を取り上げます。
人が動く施策を、なぜエビデンスに基づいて設計できるのかを解説します。【記事】

第3回では、後半の カスタマイズ を取り上げます。
同じ基盤から、用途や個人特性に合わせてアプリがどう変わるのかを紹介します。【記事】

第4回では、イベントプロモーションの事例を題材に、BXが実際の施策設計をどう変えるのかを見ていきます。

まとめ

行動科学は、これまで一部の専門家が扱うものになりがちでした。
BXPFが目指しているのは、それをもっと現場で使える形にすることです。

「人が動く施策を考えたい」
「その場しのぎではなく、根拠ある企画にしたい」
「PoCまで素早く形にしたい」

そんなときの新しい選択肢として、BXPFをぜひご覧ください!

↓↓↓↓↓↓

「行動変容プランニング」

【次の記事へ(第2回)】

引用文献

  1. https://www.uber.com/en-GB/blog/applied-behavioral-science-at-scale/
  2. Hebden L et al. (2012) Development of smartphone applications for nutrition and physical activity behavior change. JMIR Res Protoc. 1(2):e9. doi: 10.2196/resprot.2205.
  3. Rachel N Carey et al. (2019) Behavior Change Techniques and Their Mechanisms of Action: A Synthesis of Links Described in Published Intervention Literature. Ann Behav Med, 53(8), pp. 693–707, https://doi.org/10.1093/abm/kay078