
こんにちは!コンバージングテクノロジー研究所の杉山友里です。
私たちは、障害やDE&Iの理解促進に繋がる活動を通して、人々のQOLを向上し、ウェルビーイングな社会の実現に貢献するために日々取り組んでいます。
この度、音をからだで感じることができるデバイス「Ontenna(オンテナ)」が、聾学校でどのように利用されているか調査した結果を紹介いたします!
Ontenna(オンテナ)とは
Ontennaとは、髪の毛や耳たぶ、えり元やそで口などに装着して、振動と光によって音の特徴をからだで感じるアクセサリー型デバイスです。
60〜90dBの音を256段階の振動と光の強さに変換し、音の特徴を伝達する仕組みで、音のリズムやパターン、大きさを知覚することができます。なお、60dBは日常生活における一般的な会話の大きさの音で、90dBは電車がガード下を通る音のような非常にうるさく感じる音です。
ろう・難聴者、聴者が共に楽しめる未来を目指して、ろう者と聴者の協働で開発しました。
Ontennaは、本体に内蔵されたマイクがひろった音に反応します。また、Ontennaコントローラーを用いることで、通信機能により複数のOntennaを同時に制御することができます。プッシュボタンを用いてリズムを送ることや、 マイクやスマートフォンの音情報を伝えることも可能です。この2種類のデバイスを利用シーンに合わせて活用しています。
現在、Ontennaは聾学校の授業で使われているほか、卓球などのスポーツ観戦や音楽ライブなど様々なイベントにも活用され、ろう・難聴者と聴者が一緒に楽しむ機会づくりに貢献しています。こうしたOntennaの取り組みが評価され、2022年に「恩賜発明賞」を受賞しました。恩賜発明賞は、公益社団法人発明協会が主催する全国発明表彰の象徴的な賞で、最も優秀と認められる発明などの完成者に贈呈される賞です。
また昨年は東京2025デフリンピックの卓球競技の観戦にも活用されたほか、ろう者発の応援方法「サインエール」やハンマー投げの練習でタイミングやリズムを合わせることにも有用ということがわかり、今後更なる活用の可能性についてろう・難聴者の当事者と一緒に研究していきます。


Ontennaと聾学校
Ontennaは、弊社社員の本多が大学在学中に開発を始め、富士通に入社後に製品化を実現しました。
本多は開発に当たって、ろう者へのヒアリングを重ね、現在のデザインにたどり着くまでにたくさんのプロトタイプを一緒に作りました。その過程では聾学校に何度も通い、子どもたちが快適に装着できる形になるまで何度も試行錯誤を繰り返し、クリップでからだに着けられるいまのデザインに至りました。また、先生方からは簡単に充電できないと授業で使いづらいという声をいただき、USBの抜き差しなしで充電できるマグネット式の卓上充電器も開発しました。

プロトタイプを用いたイベントなどの企画を何度も手掛け、社内外から多くの共感や評価を得たことで、ついに2019年にOntennaは製品化、一般販売開始するに至りました。その際、全国聾学校長会の協力を得て、全国8割以上の聾学校にOntennaを配布しました。それは、本多がOntennaを誰に一番に届けたいのかを考えたときに、最初に笑顔でOntennaを使う聾学校の子どもたちが頭に浮かんだこと、幼少期に音のリズムを体験すること、音や振動に合わせて体を動かすことが重要であると考えたことから実現したものでした。
以下に、聾学校で活用されている主なシーンをイラストと動画で紹介いたします。
1.音楽
メトロノームの音をコントローラーに繋いだマイクでひろい、リズムをOntennaで感じながら楽器を演奏する。
2.体育
コントローラーを押すリズムにあわせて、ダンスをする。
3.発声練習
コントローラーに繋いだマイクを通して話すことで、英語や日本語のアクセントや間がわかる。

Ontenna利用実態に関するアンケート
2026年2月から3月にかけ、導入から約6年経過したOntennaの利用実態を把握するため、当時Ontennaを配布した聾学校83校を対象にアンケート調査を実施しました。
調査結果をもとにOntennaの機能改善や、より良い活用方法の検討・提案に役立てるとともに、デフリンピックレガシーの定着に向けた関係づくりが目的でした。
アンケートでは、以下の内容について調査を行いました。
<アンケート内容>
1. 回答者の属性
2. Ontennaの活用状況。現在も活用しているのか、または過去に活用していたか
3. Ontenna活用シーン
4. Ontenna活用シーンに対する幼児・児童・生徒の反応
5. Ontennaを活用していない・しなくなった理由
6. Ontennaへの興味・関心
<アンケート結果>
・Ontennaの活用状況
図5のとおり、Ontennaを現在も活用している学校は34.6%にあたる27校でした。また、Ontennaについて活用したことがない・知らないと回答した学校が13校でした。
現在活用されていない学校に共通して言えることとして、各学校の現場に合った使い方が十分に浸透する前に担当教員が異動等でいなくなり、使われなくなった可能性があると想定されます。
私たちは、今回の調査をきっかけにOntennaを改めて認識していただき、また活用いただけるようサポートしていきたいと考えています。

・Ontennaの活用シーン
図6のとおり、Ontennaは音楽や体育の授業で現在多く活用されていること、各学校独自の活用シーン(その他活用シーン)が生まれていることがわかりました。
アンケートにご協力いただいた先生のなかには、教育相談や聴能担当の先生もいました。地域の学校に通う難聴の児童・生徒や、乳幼児の「きこえ」に関する相談および地域の学校へ「きこえ」に関する授業などを担当されています。このことから、Ontennaは聾学校のなかだけでなく、地域の小学校に通う難聴の子どもたちにも活用できると考えられます。

最後に、各学校独自の活用シーンについて一部紹介いたします。
・その他の活用シーン
・地域の小学校のきこえの授業でOntennaを紹介する
聾学校では、聴覚障害への理解を深めるためにきこえに関する授業を行っている学校もある。
ロジャー(※)や補聴器の紹介に加えて、Ontennaを紹介することで、体験した小学生はきこえない・きこえにくい人達はどのようにして音を体感しているか、聴覚以外で音を体感するにはどうしたらいいかを考えることができる。
※ロジャー:話し手の声をワイヤレスで補聴器や人工内耳に直接届け、騒音や距離の影響を抑えてことばの理解を大きく向上させるフォナック社の補聴支援システム
・音楽の授業で楽器を演奏する際、拍のリズムをOntennaのコントローラーを押して伝える
リコーダー等の楽器を演奏する際、児童・生徒は音のリズム感覚をつかむことが難しいため、コントローラーをとおして拍のイメージをつかんでもらう。拍のリズムをつかんだあと、音楽全体をOntennaで感じると曲のイメージをつかみやすい。
・乳幼児に音の存在をしらせるために、Ontennaの振動と光を活用
きこえない・きこえにくい乳幼児は音の存在に気付くことがきこえる乳幼児と比較すると遅い。
乳幼児のからだにOntennaをあて、振動や光を感じることで音の存在をしってもらうきっかけになる。
聾学校におけるOntenna活用の今後について
調査結果から、Ontennaを現在も活用している学校と活用していない学校には、大きな差がありました。
<Ontennaを現在も活用している学校>
・Ontennaを管理し、活用を推進する先生がいる
・先生同士の引継ぎ資料にOntennaが含まれている
<Ontennaを活用しなくなった学校>
・Ontennaの活用を推進する先生がいない
・Ontennaの使い方や活用方法がわからない
この結果から、Ontennaを聾学校でより活用していただくためには、使い方ガイドを作成し、聾学校の先生方にOntennaの活用方法を知ってもらうことが大切と考えました。
本アンケートをきっかけに、何校かの聾学校の先生への追加ヒアリングならびに、どのようなガイドがあると活用しやすいかなど意見をもらうことができました。
<聾学校の先生の課題認識>
・日々の業務で手いっぱいでOntenna活用を考える時間がない
・Ontennaを説明する資料がないため、学校全体への共有が難しい
・人工内耳や補聴器の使用、手話話者、聴覚以外の複数障害の有無など、1人1人のきこえの違いにより、誰がOntennaを活用できるかのイメージが難しい
・Ontennaの活用シーンをたくさん知りたい
現時点で私たちが想定する使い方ガイドの作成方針は以下のとおりです。
<使い方ガイドの作成方針>
・学校全体で共有できるガイド
・Ontennaの使い方や活用を理解できるガイド
具体的に活用シーンがイメージできるようOntennaの対象(乳幼児・児童・生徒)を明確にする
今後もOntennaを通して、聾学校やろう・難聴者の教育現場に貢献するとともに、Ontennaの活用シーン・方法をアップデートしていくことで、より多くの子どもたちにOntennaを使ってみたいと思っていただけるようアプローチをしていきます。
関連リンク
・Ontenna Webページ
https://ontenna.jp/
・富士通プレスリリース 音を振動や光で知覚する身体装着装置の意匠が「恩賜発明賞」を受賞
https://info.archives.global.fujitsu/jp/news/2022/05/31-1.html
・富士通 広報note 東京2025デフリンピックで富士通のOntennaとエキマトペが活躍!広がるOntennaの輪と未来への展望
https://note.com/fujitsu_pr/n/nedabbd3fcc0a
・フジトラニュース デザインとテクノロジーで、誰しもが笑顔になれる世界へ
https://global.fujitsu/-/media/Project/Fujitsu/Fujitsu-HQ/local/blog/article/archives/blog-dl-20220719-01-jp.pdf?rev=944edf0b90b6446d9e2cc787e623f355&hash=465E01D17EA9189C85941124A78BDEB3