こんにちは、人工知能研究所の小橋と木村です。
11月19日から22日にアメリカ・シカゴで開催されたマイクロソフト社(MS)の顧客向けイベントMicrosoft Ignite 2024で、前回 Microsoft Build 2024と同様にMSのAIオーケストレーション機能であるSemantic KernelとFujitsu Kozuchi AI Agentのコラボをプレゼンしてきましたので、紹介します。
MS Ignite 2024
MS IgniteはMS社が開催しているMSの顧客向けイベントです。コロナ禍明けの昨年から毎年11月頃に開催されるようになり、今年は昨年と比べて参加者数が現地14,000人と3倍程度増え、オンラインでの参加者数も20万人以上ととても大規模なイベントとなりました。800を超えるセッションの中で80以上の新しい製品アップデートが発表され、会期中に雪の積もる日もあった寒いシカゴでしたが、どのセッション会場も非常に熱気に包まれていました。
MS Ignite 2024では、Agentic World というキーワードがとても印象的でした。AIエージェント・マルチエージェントを実現するための製品群のアップデートや、ユースケース紹介等の多くのセッションが盛り上がっていました。Satya CEOのキーノートにて Copilot is the UI for AI と宣言されたように、ユーザに最も近い所にはCopilotがあります。さらにその裏で自律的に動くエージェントを開発する環境としてのCopilot Studioや、実行環境としてのAzure AI Foundry等の製品スタックをこのタイミングで披露できているところにMSの強さを感じます。
エージェントまわりの感想をまとめると、
- なんでもかんでもエージェント 個人的には「特化型生成AIもそれだけで十分に使えるならAgentとして呼んでも良い」派なので、これは理解できます。しかし、特化型生成AIも大体はそのまま使えないのでAgentic AIでいわれているようなToolとかPlaningとかを使うように寄せていく必要があるのではないかと思いました。
- マルチエージェントがもう実現できてきている トヨタ自動車の事例 のように、個々のパワートレイン技術の専門知識を備えた複数エージェントをAzureに構築した際のプラクティスや、 Cognizantの事例 のように、DAG(非循環有効グラフ)でつながった複数エージェントが実際にやりとりする様子は大変興味深いと思いました。一方で、横のエージェント同士が複合的にやり取りし合うような例はまだ少ないように思いました。
- 自律性は「自ら動く」ではなく、「予め設定しておいたトリガーにもとづいて動く」 なんとなくStored-Procedureを自律性と呼んでいるものが多い印象でした。
ブレークアウトセッション:Productive AI with Semantic Kernel
我々は前回のMS Buildと同様に、今回もSemantic Kernelチームとの一緒にブレークアウトセッションをもちました。 今回ははFujitsu Composite AIではなくそのアプリケーションの一つとなるFujitsu Kozuchi AI Agentへの発展という形で発表しました。
イベント最終日のセッションだったため、座席は満員とはいきませんでしたが、テッキーなマニアックで濃い〜人たちにもアプローチできてよかったのではと思います :)
プレゼンを簡単に紹介しますと、
我々は近い将来AIと人間の関わり合い方が変わると考えています。 具体的には、生成AIを含むこれまでAIの「聞いて答える(受動的)」から、「自ら考えて動くAI が、人と人とのやりとりに自然に混ざり、新しい知見や閃きを提供する(能動的)」への変化です。これにより、AIが人々の対話に入り込み協調的に動作することで、人々が新しい知見やひらめき、サジェスチョンを得て、人々とAIと一緒に創造的な活動をするBeyond Chatへの変化と捉えています。
この考えにもとづいてFujitsu Kozuchi AI Agentを開発し、それを会議エージェントとして使った場合の例がこのYouTubeビデオです。
Fujitsu Kozuchi AI Agentのウリは、自ら考えて動く をいち早く実現しているところにあります。エージェントは会議でなされた会話を逐一聞いて、解く必要がありそうなタスクを自ら生成し実行結果を見せてくれます。
これがシステムのフロー図です。簡単には、「①〜②のパートが会議の会話を聞く」「③〜⑦がAgentic AIが自ら作ったタスクを実行して結果を取得する(従来のFujitsu Composite AIの担当部分)」「⑧〜⑨が結果を返す」の3つから構成されています。ポイントは①〜②と③〜⑨は完全に非同期で動くように作ってあることで、これまでのように聞かれたから返すという仕組みにはなっていません。もちろん、チャットからメンション付きで問い合わせれば、これまでの対話形式でも回答するパスも用意してあります。
MSのテックブログに事例紹介記事書いてもらっているので、ご興味のある方はどうぞ!
Customer Case Study: Fujitsu Kozuchi AI Agent Powered by Semantic Kernel @ MS Dev Blog
またIgnite開催中に、以前Semantic KernelのPMをしていたMatthewとも会う機会がありました。MatthewはいまはAzure AI AgentのPMをしており(興味の方向が近い笑)、我々のAgentic AIをみて「会話を聞いて、ツールも使って返すのはすごいぞ!」と彼の同僚に宣伝していました。「またこれをたった数ヶ月で作ったのか(MS Buildのときも数ヶ月で作った)。やるな。」とも言っていたのは印象にのこりました。
発表者の皆と最後に記念撮影 :)
富士通はAIエージェントに注力していきます
余談ですが、MattiewによるAzure AI Agent Serviceのプレゼンの中で、Customerとして富士通がトップに掲載されていました。 これは、我々がSemantic Kernelとコラボを続けているだけでなく、富士通内で我々とは別の部隊がAzure AI Agent ServiceのCo-Building Programに参加していたことが理由として挙げられます。
富士通は今後もAIエージェントにますます注力していきますので、今後もどうぞお見逃しなく!