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fltech - 富士通研究所の技術ブログ

富士通研究所の研究員がさまざまなテーマで語る技術ブログ

IoTDI2020に参加しました

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こんにちは。富士通研究所サイバーフィジカル融合基盤PJ所属の大西(入社3年目)です。 今回は、2020年4月22,23日に開催された国際会議であるIoTDI 2020に参加し、口頭発表を行ったので報告します*1

IoTDI概要

IoTDI(ACM/IEEE Conference on Internet of Things Design and Implementation)はIoTに関連するシステムの設計と実装における課題・技術・新たな方向性を議論するための国際会議であり、毎年開催されており今年で5回目の開催となります。 IoTDIは例年IC2ECPS-IoT Weekとの共催となっており、今年も例に漏れずIC2E、CPS-IoT Week(HSCC、ICCPS、IPSN、RTAS)、ICFSとの共催で大規模な会議群となりました。

今年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による影響で、当初予定されていたシドニーでの開催が取りやめとなり、全てのイベントがオンラインで開催されることとなりました。 そのため、開催日程が3日間から2日間に変更となったり例年30分だった発表時間が20分に短縮されたりと、様々な変更点がありました。 オンラインでの開催が決定されてから開催までの期間が約1カ月と、急な変更にも関わらず全日程が無事に成功裏に終わったこと、運営に尽力された方々に感謝いたします。

今年のIoTDIは、論文投稿本数は68本、その内フルペーパー14本(採択率20%)、ショートペーパー10本が採択されました。 また、7件のポスター発表と4件のデモ発表がありました。

発表について

本会議は「Data & Control Adaptation」「Smart spaces & IoT」「Smart Buildings & Spaces」「AI/ML for IoT systems」「Testbeds & Experiences」「Awards, Posters & Demos, Business meeting」「Security, Privacy and Robustness」の全7セッションで構成されておりました。

IoTDI 2020スタートです!

私の発表

私が投稿した論文はフルペーパーとして採択され、 Session1: Data & Control Adaptationの最初(IoTDIのトップバッター!!)に、Recovery-Conscious Adaptive Watermark Generation for Time-Order Event Stream Processingというタイトルで15分間の発表を行いました。

これは現在我々が研究開発を進めているリアルタイムイベント処理基盤技術Dracenaにおいて重要となる、 IoTデバイスから処理基盤に到着する一連のデータのうち一体どの時刻までのデータが全て到着しているのか、という推定を行い、その時刻までのデータを時刻順に並び変える技術です。 例えばある道路の過去1分間の交通量を集計する処理を行うためには、過去1分間に道路を通ったコネクテッドカーからのデータが全て到着していなければ正確な処理結果は得られません。 その一方で、長時間待てば全てのデータが確実に到着しているだろうと考えて10秒待つなどとしてしまうと、処理のリアルタイム性が失われてしまいます。 私の発表は、直近に到着したデータが処理基盤に到着した時刻の分布を統計的に解析することで、全てのデータが到着している状態を実現するための最小の待ち時間を推定する技術を開発し、これの評価を行ったというものです。

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Dracenaと開発したモジュール(論文より引用:図3)

私の初の国際学会での口頭発表でしたが、発表そのものは事前の練習の成果か自信をもって行うことができたと思います。 その一方で質疑応答に関しては、緊張もあってかやや的外れな回答をしたり、うまく英語で伝えることができなかったりと、悔しい結果となってしまいました。

Best Paper

Best Paper Awardを受賞した論文は、Carlos RuizらによるIDIoT: Towards Ubiquitous Identification of IoT Devices through Visual and Inertial Orientation Matching During Human Activityです。

これは例えば、スポーツジムにおいて、ジム内で活動する人々が装着する活動量計などのIoTデバイスを識別し各人の活動をスマートディスプレイに表示する、等のサービスを実施する際に必要となるデバイスの識別を行う際に、 人の骨格の情報とデバイスのIMUからのデータを組み合わせることで既存技術に比べて2倍もの精度を獲得したという発表です。 興味のある方は是非論文を読んでみてはいかがでしょうか。

余談:参加の経緯

富士通研究所には若手海外派遣研修という、若手の研究員を10日間海外の会議や研究機関に派遣する制度があります(2019年度時点)。 今回の投稿はIoTDIのその採択率の低さ(約20%)からチャレンジングなもの(実際私の上司は採択されるとは思ってなかったよう)でしたが、 この制度を活用することで採択されなかったとしても会議に参加しシドニーを訪れることができるという背景がありました。 結果的には、論文が採択され国際会議で発表を行うという経験を積むことができました。

オンラインでの開催について

新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、会議の全てのイベントはオンライン上のZoomで開催されました。 会議の開始時刻は参加者への事前アンケートの実施の元決定され、初日は日本時間19時開始でした。 また、各セッション内の発表順序も、発表者のタイムゾーンを考慮して決定されていたようです。 発表者は事前にスライドと発表動画を提出し、発表時に問題が発生したらビデオ再生によって発表が進められました。 各セッション間の休憩時間にはZoom Virtual Breakout Sessionという、発表者単位に用意された部屋で議論を行うセッションが設けられており、発表者と直接議論を行うことが可能でした。 また、時間を問わず、Slack上でも議論がなされていました。

このような形式での発表は初めてでしたが、参加者への詳細な手引きや、Zoom masterと呼ばれるテクニカルサポータとの事前の接続確認もあり、オンラインでの開催でも不安なく参加することができました。 発表中も、同時接続が100人超と多くの参加者に発表を聴いていただけました。 座長の提案で、セッション中は積極的にビデオをオンにしようとのことで、発表者としてもカメラに向かって一人で発表しているという寂しい感覚はありませんでした。 オンラインでの発表では、すぐに見える位置に原稿を表示することができるのも一つのメリットではないでしょうか(笑) もちろん現地開催ならではの顔を合わせての議論や食事を共にする等の楽しみは失われてしまいましたが、 個人的には、発表が聞きやすく、別セッションに移動するのに会場を移動する必要がないなど、オンラインによる開催のメリットも十分感じる会議となりました。

今後はこのような完全オンラインや現地での開催とオンライン開催が融合したような開催形態が増えてくるかも知れません。

おわりに

IoTDIと共催された多くの会議はCPS・IoTに関連する幅広い領域を対象としており、今回の参加では現在の研究領域以外の普段触れないような発表を聞くことができました。 また、国際会議での口頭発表というとても良い経験を積むことができました。 振り返ってみると悔しい点もありましたが、今後も国内外問わず発表の経験を積んでリベンジしたいと思います。

改めて、世界的に新型コロナウイルス感染症による混乱が続く中、オンライン開催に向け尽力くださった運営の皆様に感謝申し上げます。 IoTDIの次回の開催は未定ですが、機会があれば是非また参加したいです。

*1:画像はIoTDI 2020ホームページより引用