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fltech - 富士通研究所の技術ブログ

富士通研究所の研究員がさまざまなテーマで語る技術ブログ

MICRO 2023に現地参加しました。

(左はMICROのロゴマーク、右はWestin Harbour Castle 提供)

こんにちは、富士通研究所コンピューティング研究所の依田勝洋です。今回は2023/10/28~11/1にWestin harbour castle (トロント、カナダ)で行われた国際学会Micro2023(https://microarch.org/micro56/index.php)をご紹介します。同学会には弊社から同僚の戸倉宏樹さん、トロント現地スタッフの一場利幸さんも参加しました。 写真は公式サイトのホテル案内の写真の抜粋です。オンタリオ湖畔にあり湖側、都市側両方の景色を堪能できるホテルです。私は都市側に宿泊しました。

(Westin Harbour Castle 提供)

Microの概要

IEEE/ACM International Symposium on Microarchitecture® はコンピュータのマイクロアーキテクチャに関する世界トップレベルの国際学会の一つです。今年で56回目を迎え投稿件数はほぼ毎年増え続けています。採択率は20%強と低く難易度の高い学会の一つです。今年は投稿数424件、採択数101件(採択率23.8%)でした。

採択数と投稿数の推移

また、2020年と2021年はCOVID-19の影響でオンライン開催でした。昨年から対面開催に戻り、今年は462名の参加があったそうです。私の感触では特に例年より日本人の参加者が多かったです。少なくとも10数名の方とお会いしました。 メインプログラムは主にWestin harbour castleのMETROPOLITAN BALLROOMで、写真のように丸テーブルが並んだ形で行われました。

Keynotes

半導体の集積度(密度)は18か月で2倍になるといわれており(ムーアの法則)、50年近くこの法則は維持されてきました。微細化することで小型化、高性能化、低電力化が実現され、約50年前1部屋ほどの大きさが必要だった富士通のコンピュータ(FACOM)以上の計算能力がスマホに入るくらいになっています。 しかし、ここ数年でこの法則に終わりが見えてきたのではないかという議論がなされています。Keynoteでは、この点に触れつつ微細化だけではなく別の指標、手段も必要であるというお話がありました。 まずタイトルと講演者を列挙します。

Keynote I Title: Societal Infrastructure in the Age of Artificial General Intelligence By: Amin Vahdat Vice President of ML, Systems and Cloud AI at Google

Keynote II Title: With Great Power Comes Great Responsibility By: Debbie Marr Intel Fellow and Chief Architect

Keynote III Title: Life Post Moore’s Law: The new Design Frontier By: Mark Horowitz Yahoo! Founders Professor in the School of Engineering and Professor of Computer Science, Stanford

Keynote I はGoogleの方の講演でした。TPUの話を踏まえつつ、こまめに電源をオンオフすることで低電力化を実現した話、微細化だけではなく購入から運用までのトータルコストで考えよう、という指標が紹介されました。

Keynote II はIntelの方の講演でした。ムーアの法則はまだ続いている、という観点からそのために必要な熱の管理や電圧を下げる技術が紹介されました。 半導体は使うととても熱くなります。それは普段皆さんが使われているパソコンでも同じで、放熱用のファンがうるさいと思った方もいらっしゃるかもしれません。

Keynote III はスタンフォード大学の方の講演でした。こちらは前の講演と反対にムーアの法則は終わっている、という観点からのお話しでした。その理由は微細化にかかるコストが高くなっているため、と述べられました。大きさを半分にしても価格が2倍になってはもとがとれないではないか、という見方です。 半導体設計の専門家は不要、ツールに任せられる。アプリケーションを作りたい人がそのツール使って開発し、保守になるべくお金をかけないようにすればよい、というお話でした。

発表の傾向

ここ最近の傾向として、Micro ArchitectureやMachine Learning (ML)に関する論文は、Micro Architecture+番号、Machine Learning+番号とひとくくりのセッションにされることが多かったです。しかし今年はMicro Architectureでは”prefetch”や”caches”といった要素技術ごとに独立のセッションが組まれました。MLも”Sparsity”、”Compiler Optimizations Reconfigurable Architectures”といった細分化がされていました。おそらく研究の詳細分野化が進んでいるのだと思います。 図はこれらをいったんML, Micro Architectureとひとくくりにして手元で集計した結果です。 ML, Micro Architecture関連の発表は近年増えています。 Security, GPU関連の発表数は堅調です。 2021年にMLのセッションが見当たらなかった原因は不明です。2022年のAcceleratorはSecurity, In memoryに統合したため0件扱いにしています。

また、日本から2件採択された論文がありました。日本からの採択数は例年少ないためうれしく思いました。うち1件は弊社とも関連がありますので簡単にご紹介します。 名古屋工業大学の小泉先生の発表で、先生が所属していた東京大学坂井、入江研究室の入江先生が提唱しているStraight Architecture (2018年 Micro採択済)のリネーマー部の改良案です。リネーマー用のバッファをレジスタグループごとに持たせ、関係のあるリングバッファのみ稼働させることで省電力化を実現しました。

[Toru Koizumi (Nagoya Institute of Technology), 2023]

おわりに

対面開催に戻って2年目ということで参加者も増えてきていたように感じます。またCOVID-19のおかげ?でオンライン発表のノウハウがたまったためか、チュートリアルやワークショップでは、ハイブリッド形式で発表する団体が多かったように感じました。今後もこういった国際学会に参加して技術動向を注視していきたいと思います。