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fltech - 富士通研究所の技術ブログ

富士通研究所の研究員がさまざまなテーマで語る技術ブログ

Federated SNS~分散型SNS×生成AIチャットボットによるコミュニケーション活性化の効果検証実験と活用アイデアソンを実施

こんにちは、データ&セキュリティ研究所の仲道です。当研究所では、分散型SNS上で生成AIチャットボットとユーザが相互にコミュニケーションする次世代コミュニケーションサービス基盤Federated SNSを開発しています。本記事では、Federated SNSの概要に加え、私たちが実施した効果検証実験とアイデアソンの結果について紹介します。この記事を読んで、Federated SNSに関心を持っていただけたら、その感想やフィードバックを私たちにお聞かせいただけると、今後の開発に大いに役立ちます。

分散型SNSと生成AIの新たな出会い

私たちの日常生活において、SNSやAI技術はもはや欠かせない存在となっています。現在,SNSの世界では、従来の中央集権的なモデルが多くを占めています。これにより、運営方針の変更やシステムのアップデートがユーザのコミュニケーションやコミュニティ構築に悪影響を及ぼすことがあります。ユーザ間のつながりや対話の履歴が一方的に失われることへの懸念は、新たな形のSNS、すなわち分散型SNSへの関心を高めています。分散型SNSにより、ユーザが自らのサーバを持ち、自由にコミュニティを構築できる柔軟性を提供し、ユーザ中心のサービス形態を実現できるようになります。

一方でAI技術、特に生成AI技術はその進化により、我々が想像もしなかった方法で情報の生成と処理を可能にし、さまざまな領域でのブレークスルーを促進しています。これらの技術が提供するテキスト、画像、音声は、人間が作成したかのようにリアルで、迅速かつ高精度な情報提供を可能にします。

では、分散型SNSとAIを組み合わせたらどうなるでしょうか?私たちは、分散型SNS上で生成AIベースのAIチャットボットがユーザとコミュニケーションする次世代コミュニケーションサービス基盤であるFederated SNSを開発しています。次の章で、Federated SNSの概要と特徴について説明したいと思います。

Federated SNSの概要と特徴

以下の図は、Federated SNSの概要を示したものです。

Federated SNSの概要

Federated SNSは、独自のルールに基づいて運用するコミュニティのSNSインスタンスを、共通のプロトコル「AT Protocol(注)」で連携・連合させる、いわゆるFediverseの実現が可能な分散型SNSの特徴を持っています。これにより、ユーザはSNSインスタンスの独自ルールから解放され、自身の個人情報や投稿履歴を自ら管理しながらコミュニティ内で活用できるようになります。また、用途や関心に応じて分散型SNS同士を柔軟に組み合わせることができ、持続可能なグローバルコミュニティの実現が可能になります。

注)AT Protocol:中央集権的な既存SNSからの脱却を目指す分散型SNSのためのオープンソースプロトコル。AT Protocolを用いた独自SNSがインターネット上に多数存在し、ユーザが自由に参加・移行できる環境の構築を目指している

Federated SNSのもう1つの大きな特徴は、ユーザの個性に合わせて意思決定をサポートする生成AIベースのチャットボットが組み込まれている点です。生成AIチャットボットはユーザの質問やリクエストに応じ、適切な応答を提供しながら、ユーザによるコミュニティ内での投稿を促すなどすることで、質の高いコミュニケーションをサポートします。

このような分散型SNSと生成AIチャットボットの特徴を生かすことで、以下のようなコミュニケーション上の問題の解決が期待されます:

  • コールドスタート(初対面時の会話ゼロ状態)の解消
  • 非同期コミュニケーションにおける意図やタイミングのズレの解消
  • エコーチェンバー(コミュニティ内の話題や視野の狭さ)からの脱却
  • 閉塞感・停滞感からの脱却

Federated SNSは、ユーザによる個人情報の自己管理と高品質なコミュニケーションを実現する新たなSNSの形と言えます。これにより、コミュニケーションの問題を解消し、より健全で活発なコミュニティ形成が期待されます。

効果検証実験とアイデアソンの開催

分散型SNSへのAIチャットボットの導入がコミュニケーションの活性化にどのように寄与するかを検証するため、私たちは効果検証実験を実施し、ユーザ間のコミュニケーションやコミュニティ内での相互作用の様子を観察しました。また、効果検証実験の後、Federated SNSのさらなる利用可能性を探るためのアイデアソンを開催しました。

開催概要

  • 効果検証実験期間:2024年1月29日から2月4日まで
  • アイデアソン開催日:2024年2月5日(オンライン開催)
  • アイデアソン参加者:参加募集に応募した学生および社員が参加

効果検証実験およびアイデアソンの様子

効果検証実験では、参加者を2つのグループに分け、アイデアソンの1週間前からFederated SNSを利用し、情報交換やアイデアの事前検討を行ってもらいました。

参加者はそれぞれに割り当てられたAIチャットボットと会話し、AIチャットボットに質問をしたり、逆にAIチャットボットからの質問に回答するなどを行いました。また、グループのチャネルでは他の参加者と自由にコミュニケーションを行った他、AIチャットボットが個々の活動内容をサマリして投稿し、参加者はその情報からさらに気づきを得る様子も見られました。

アイデアソン当日は、「分散型SNS × AIチャットボットの活用アイデアを考えよう!」をテーマに、参加者に新たな利用アイデアを創出してもらいました。オープニングとテーマ説明に続き、2つのグループに分かれて1時間のグループ検討を行い、アイデア整理とプレゼン資料の作成を行いました。その後、各チームよる15分のプレゼンテーションが行われました。両チームともにFederated SNSでの事前の情報交換を行っていたこともあり、短い時間にも関わらずアイデア整理とプレゼン作成まが効率よく行われ、大変分かりやすいプレゼンテーションスライドにまで落とし込めていました。

アイデアソンの成果と審査

発表された各グループのアイデアは以下の通りです。

アイデアソンの審査は、東工大と富士通研究所の有識者により、5つの項目(イノベーション性/実現可能性/影響力/ビジネスポテンシャル/プレゼンテーション)に対して各10点、合計50点満点で評価し、審査員の評点の合計得点で優勝を競いました。その結果、グループ1「エージェントNINJA(コミュニティ偵察)」がこの栄誉を勝ち取りました。

優勝チーム紹介

  • アイデアのタイトル:「エージェントNINJA(コミュニティ偵察)」
  • グループ1メンバー(*): 助川 拓哉さん(会津大学大学院)、趙 俊寧さん(東京工業大学)、林田 尚子さん(富士通)、井上 昴輝さん(富士通)
    (*アイデアソン参加者の氏名及び所属の掲載は、本人からの同意を得た上で行っております。)

Federated SNSによるコミュニケーション活性化の効果

Federated SNSがコミュニケーションの活性化にどのように寄与したかについて、参加者の活動を観察することで分析を行いました。この期間中、参加者の投稿数や投稿内容の変化に注目し、Federated SNSがユーザ間やコミュニティ間の対話をどの程度促進したかを評価しました。この分析結果は、学会への投稿・発表を予定しています。Federated SNSを通じたコミュニケーションを学術的な視点から検証し、その結果を共有することで、分散型SNSとAIチャットボットの組み合わせによる新たなコミュニケーション形態の可能性を探ります。

今後の予定

Federated SNSの開発はまだ始まったばかりです。今後は、より大規模な実証実験を行い、その効果をさらに検証していく予定です。特に、AIチャットボットの機能を高度化し、ユーザのコミュニケーション体験をより豊かにすることを目指しています。 また、今後も本ブログにてFederated SNSに関する情報を発信していきますのでよろしくお願いします。

Federated SNSに興味のある方

FeSに興味ある方はFujitsu Research Portalでも情報を公開してますのでご覧ください。
  Fujitsu Research Portal:https://portal.research.global.fujitsu.com/

また、実際にFeSのお試しをご希望の方はこちらまでご連絡ください。
  連絡先メールアドレス:contact-federated-sns@cs.jp.fujitsu.com